さて前回に引き続き「傷の治し方」です。

パート①では感染を予防するためには洗浄が大事であることを述べてきました。
パート②では皮膚科医の腕の見せ所「水分調整」について書いていこうと思います。

残念ながら皮膚科医の腕の見せ所、というくらいで
一般の方に水分調整はほぼほぼ不可能と考えてもらってもよいでしょう。
(ああ・・・一般の方むけのコラムでなんていう大惨事なんだっ!)

主に我々皮膚科医は
・軟膏などの外用剤
・ガーゼなどの被覆材
を用いて創の水分を調整します。
ここで大事なのはとにかく適切な水分量に調整することです。

しかし残念なことにこの水分量は創面を観察し続けてようやくわかってくる感覚的なものなので
なかなか伝えることが難しいものでもあります。

ザックリ
・創縁の表皮が白く浸軟して(ふやけて)いる=水分多すぎ
・被覆に使用したガーゼなどが固着する=水分少なすぎ
だと考えてください。

水分が少なすぎても多すぎても皮膚は早く形成されません。
あくまで「適切」である必要があるのです。

なので例えば外用剤を使用する場合
水分多すぎ=吸水性の外用剤(マクロゴールとか)
水分少なすぎ=軟膏タイプの外用剤(ワセリンとか)
を使用するのです。
おそらくほとんどのご自宅には軟膏タイプのものしかないでしょう。
水分が少ない時には軟膏タイプは適しているけど、多いときはちょっとね・・・となるわけです。

また、例えば被覆材を使用する場合
水分多すぎ=吸水性の被覆材(ガーゼ、ハイドロコロイドなど)
水分少なすぎ=水分を維持する被覆材(ハイドロジェルなど)
を用います。
サランラップは水分が少ない時はまだしも、多い時には全然ダメです。

我々皮膚科医は創をよく観察しこれらの外用剤と創傷被覆材を使い分けたり、時には併用したりしながら
傷が迅速になおるお手伝いをしているわけなんですね。
(みなさんのお会いする皮膚科医の先生は一瞬しか見ないかもですが、その一瞬で見分けているもんです。)

 

さてさて、いかがでしたでしょうか?
なんとなく2回にわたったコラムでしたが皮膚科医の大事にしている2つのことがわかっていただけたでしょうか?
と、いうことでケガをしたら悪いことは言わないので速攻病院に行きましょう。

・・・

・・・

・・・・え?なになに?

それでも自己処置したい、ですって( ゚Д゚)?

シカタナイナー( ゚Д゚)

まず知っておいてほしいのが手軽に用いられる湿潤療法「ラップ」ですが
いくつかよくあるトラブルがあります。

・水分が多すぎ皮膚がふやけている
・水分があふれ、周囲の皮膚がかぶれている
・感染、とまではいかないが菌が増殖し異臭を放っている
などがよく遭遇するトラブルですね。

もし・・・

もし万が一にでもラップを使った湿潤療法をどうにかして行いたいなら
・よく洗浄して毎日交換する
・周囲の皮膚の保護のためにワセリンを周囲に塗る
・水分の少ない創に限定して使う
くらいは最低するのがよいでしょう。

 

まあ、どのみち私は自己処置を全く推奨していないです。
餅は餅屋。
我々プロにお任せください(‘ω’)ノ

 

この記事の担当者

横山 侑祐
あいち栄クリニック 院長 横山 侑祐
「美容医療ってこんなにわかりやすく、こんなに楽しく受けれるものなんだ!」という声をいただくことを目標に診療しております。診療だけでなくSNSやコラムも積極的に更新しておりますので、是非一度ご覧ください。
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