まだお会いしたことがないですが、
きっと会話が弾みそうな先生から、「ブログ、面白い」と言っていただけました(^^♪
いや、お客様から「見てるよw」「勉強になる!」と言っていただけるのはもちろん嬉しいですが、
こんな片田舎の美容外科医の発信をみてくださるドクターがいらっしゃるとは・・・
恐縮ですし、でも心から嬉しくも思います!
・・・というわけで、今やなくなりつつあるネタを絞り出して頑張っていきましょう笑
ちょっと前ツイッターで話題になったのですが、
「傷の治し方」についてです。
その前に皆さん約束です。ここで書いてたからと言って自己処理に走らないでください。
ちゃんと怪我したら病院にかかってください(;’∀’)
でも、万が一病院がなかったら・・・を想定して書きます。
私が医師になったくらいから傷は「乾かす」から「濡らす」に変化していきました。
なので「傷は濡らして治す(湿潤療法)」はまだ20年程度の新しめの概念です。
180度ひっくり返った傷の治し方。なので、今日は「今」言えることを書いていきます。
(またひっくり返るかもしれないしねw)
実はこの「濡らして治す」という概念は中々厄介で、その本質をちゃんと理解しないでただ単純にサランラップなどを用いてびしょびしょに濡らす方法が素人玄人問わずネットで紹介され、それをマネしたトラブルが急増しているのが現状です。
(もちろん”正しく”使えば、綺麗に治るが。)
そこで今日はそんなトラブルを少なくすべく、我々皮膚科医が湿潤療法を用いるとき大事にしている
「感染」と「水分量」の調整についてを中心に述べていきます。
①感染
傷からばい菌が入ると、なんだか怖いですよね( ゚Д゚)
うーん・・・実はですね、傷した瞬間・・・というかそもそも健常な皮膚もばい菌だらけなんです。
問題はそれが増殖しているか、傷に定着しているか、悪さをしているかということなのです。
「ばい菌=抗生物質」
うん。間違ってはない考えでしょう。
ただ残念な事に抗生物質は「感受性」といって、すべての菌にどの抗生剤も効くわけでもなく相性があり、
もっというと「耐性」といって同じ菌でもある抗生剤が効くパターンもあれば効かないパターンもあります。
なので、ぶっちゃけ「当たればいいね」くらいのレベルです。
おそらく日本で病院に傷で受診すると8~9割の確率でゲンタシン軟膏が出ると思います。
そして残念なことにその辺にウヨウヨいる黄色ブドウ球菌という菌は8~9割ゲンタシン耐性です。
そしてさらに残念なことに、ゲンタシンは割と高頻度で「接触皮膚炎」を起こします。
傷から成分がはいり、成分に対してかぶれる体質になってしまう可能性があるのです。
・・・・ね、なんか意味なさそうでしょ。
ってか、ぶっちゃけ悪いところのが目立つでしょ(‘ω’)
なので私達皮膚科医は滅多に抗生剤の外用を創治療で用いないです。
それよりそもそもの「ばい菌を定着・増殖させない」ことを目標にするわけです。
では、ばい菌をくっつかせない大事な事はなんでしょう?
ひとまず皆さんに意識してほしいのは
①とにかく洗う、心を鬼にして洗う。石鹸もつけて洗う。
②消毒しない
③空間を残さない
の3つでしょうか。
①はなんとなくわかりますよね?
石鹸をつけることを躊躇する方もいらっしゃいますが、しっかり泡立てて使用して
しっかり残さず洗い流せば全く問題ありません。
しっかり洗浄して、ばい菌を洗い流しましょう。
創の微小な汚れさえも感染源になります。
なんならブラシでごしごししてもいいくらいです。(麻酔しないとメチャ痛いけど。)
でも、それくらい「洗浄」はとても重要だと理解してください。
②もみなさんやりがちですが、消毒をするとなんだか安心して洗浄しないって方が多いです。
実は消毒も抗生剤と同様に相性というものがあります。
また残念な事にばい菌は賢く、創面では「バイオフィルム」という一種のバリヤーみたいなのを
形成していることがあります。
実は消毒はばい菌をやっつけようとも働きますが、私達の細胞にとってもダメージを与えます。
(消毒で手荒れとかしますでしょ?あんな感じ。)
「傷がなおる」という観点において、我々の細胞が健全に扱われることも大事ですので
「いまいち効かない」「細胞にとっても毒」という観点から消毒は基本的に無しで問題なしです。
また消毒に関しても抗生剤と同様「接触皮膚炎」のリスクはつきものです。
余分なリスクは増やさない。それが大事ですね。
③はプロあるあるですが、
傷が端っこから徐々に埋まってけば良いですが、残念なことに中途半端に治療すると
表面の蓋だけしまり中に空洞が残った状態になる場合があります。
全くの無菌であれば問題ない・・・かもですが、多くの場合ばい菌がくっついており
内部で増殖し感染する可能性があります。(そしてそんな時に増殖する菌はきまって厄介な事が多い。)
ですので端っこの端っこから丁寧に傷をとじていく必要があります。
これに関してはかなり判断が難しいので、あまりに深い層は自分で処理しないのがよいでしょう。
具体的には擦り剝けた程度(真皮浅層)までが一般の方が手出しできる領域です。
さて、前述のサランラップで覆うのは湿潤療法という観点からはあながち間違いではないですが、
上記の事をしっかり理解した上で行わないと、ばい菌が増殖し悪さする、いわゆる感染を起こし
局所においては蜂窩織炎、さらにリンパや血管を介して最悪の時は「敗血症」という状態に陥り
命の危険に晒される可能性もあります。
ですので一般の方がもし湿潤療法を行うなら、サランラップという水も通さない膜で覆うのではなく
ワセリンでべたべたにしたガーゼで被覆する方が感染の観点からはよっぽど安心です。
では、巷でいう傷パワーパッドってどんなものでしょう。
これは「創傷被覆材」というものに分類され、まあ、簡単に言うと
水分量を上手ーく調整してくれる・・・といったもので湿潤療法の一環ではあります。
この点にかんしてはもう少しだけ掘り下げないといけないですが・・・・
ちょっと長くなるのでまた別の機会に。
・・・というわけでなんだかわかりにくくなりましたが
感染は怖い、しっかり洗おう。
ということだけひとまず覚えていただければ大丈夫です。
抗生物質の外用剤や消毒剤があるからばい菌対策はばっちり!
といって洗浄しないのは本末転倒ですよ( ゚Д゚)
何度も言いますが、ぶっちゃけ意味ないし逆に害があるくらいです。
ああ・・・なんかこのネタ、めっちゃ長くなってきたぞ。
疲れたので今日はここまで!
水分量はパート②で書きます。
この記事の担当者
- あいち栄クリニック 院長 横山 侑祐
- 「美容医療ってこんなにわかりやすく、こんなに楽しく受けれるものなんだ!」という声をいただくことを目標に診療しております。診療だけでなくSNSやコラムも積極的に更新しておりますので、是非一度ご覧ください。
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