しばらく皮膚科ネタが続いておりますが、
なんと今日も皮膚科ネタでございます。
読者のみなさんが欲しがるまで美容ネタはお預けです。

・・・え?何?
実は皮膚科についてもっと知りたかった、だって?

欲しがり屋さんだねっ!

 

・・・・って何の話やねん。
(最近の子には伝わらないんだろなあ、このネタ。)

そうそう、ステロイド。
たぶん皆様一度は見たことあるのではないでしょうか【リンデロンVG軟膏(RVG-O)】さん。


研修医なんて何とかの一つ覚えの如く救急外来では皮膚科系疾患が来院したらとにかくRVG-Oを処方するわけです。
何でもかんでもRVG-O。
魔法の薬RVG-O。

そう。RVG-Oは実はまあ、とにもかくにも無難な薬です。
でもなんで無難か、というのは皆さんあまり知らないようで。
今日はそんな日本中にありふれた外用薬「RVG-O」がなぜありふれているかについて述べていきたいと思います。
(この話題、果たしておもろいのか??)

結論から言うと、前述の通り無難な薬だからなのですが
以下の4つの点から無難であることが言えます
(完全にイチ皮膚科専門医の私感ですが・・・・)

 

①強さが無難
ステロイド外用薬はその薬効の強さに応じて大きく分けて5段階に分類されます。
strongest>very strong>strong>medium>weak
ってな感じです。
私達皮膚科医は皮膚の部位(厚さ)や、皮疹の形状などにより強さを使い分けるわけですが、
普段から皮膚に触れてない先生方はそんな強さを使いわけるなんて芸当はできません。
そこで日本人的な発想として「中の中を選んでおけば、まあ問題ないやろ」という考えがでてきます。
強さの観点でいうとRVG-Oはもう本当にど真ん中。
strongでも中の中
(なんでmediumが”中”じゃないねん!ってツッコミは置いておきましょう。)
皮膚科に受診するまでの数日であれば、まあ多少皮膚の薄いところだって、多少ひどい皮疹だって
中の中なら塗ってしまっても大きな問題はないため、
強さという観点で無難なRVG-Oは処方しやすいんですね。

 

②基剤が無難
ステロイド外用薬は色々な形態(性状?)があります。
軟膏、クリーム、ローション、テープ、シャンプー・・・
これらの形態の事を皮膚科では「基剤(溶媒)」と呼びます。

外用剤(塗り薬)は主剤と基剤というものからできています。
具体的には「リンデロンVG」が主剤、「軟膏」が基剤です。
イメージとしては塩水の「塩」が主剤で「水」が基剤です。
主剤を変えることで色々な味を味わえ、基剤を変えることで用途が変わりますね。

すいません。話が逸れました。
我々皮膚科医は皮疹の性状や塗り心地などによってこの基剤(溶媒)を使い分けています。
皮疹に合った薬剤は塗りやすく、効きやすくなり、そうなれば早く治るってもんです。
(これを皮膚科では”基剤で治す“と呼びます。ほんとはちょっと違うけど。)

実は残念な事に、皮膚潰瘍といって表面がえぐれているような傷の場合、軟膏以外は用いることができません。
なぜなら軟膏以外の多くの基剤は保存料や乳化剤といった添加物が入っているため、それが刺激になることがあるからです。
傷にアルコールとか、想像しただけで拷問でしょ( ゚Д゚)?

リンデロンVGを主剤にした製剤は軟膏の他にクリームやローションといった基剤がラインナップされています。
中でもRVG-Oの基剤である「軟膏」は基本的にベトベトの油であるワセリンが原料となっています。
軟膏はその性質上雑菌が繁殖しない(油脂の中では菌は繁殖しないらしいよ)ため保存料が必要なく、
使用感を良くするための乳化剤も入っていません。
ですので皮疹がどのような性状であったとしても刺激になることが無いので、気軽に使用できるのが特徴です。

皮膚を診れないから基剤がその皮疹に合っているかはわからん・・・が、少なくとも刺激などの害はなさそうだ・・・
という意味で軟膏基剤は無難に処方しやすいんですね。

 

③ゲンタシンが入っていて、なんだか安心。
皮膚科医以外の先生たちは皮疹を見分けれないので「果たしてこの皮疹にステロイドを処方していいものか」
という葛藤に駆られます。
ステロイドにより悪化しうる「感染」だったらどうしよう・・・と思うわけで、
なんとなく混ぜられた抗生物質「ゲンタシン」に、許しを求めるわけです。

まあ、ぶっちゃけ皮膚科医から見ればゲンタシンとか感染に対する対策としては意味ないですけどね。
(詳しくはこちらのコラムをどうぞ

皮疹が鑑別できない以上、ちょっと保険をかけたくなる・・・
そんな思いから抗生剤が配合されたRVG-Oは無難に処方しやすいんですよね。

 

④みんな出しててなんか無難。
日本人のいけないところですが、みんなが出してるからなんとなく処方する、というのがあります。
残念なことに救急の教科書ですら見本レシピにRVG-Oが頻用されてるくらいです。

いくら真ん中の強さだからって、使用頻度や部位によっては副作用がでうるものです。
ちなみに抗生剤「ゲンタシン」はあまり知られてはいませんが、割と接触皮膚炎(かぶれ)を起こしやすい薬剤です。

でも外用剤って副作用に関しては内服などより甘く見られがちで、皆さん深く考えず処方してしまいます。
・・・まあ、確かに数日という単位で使用して、だめなら皮膚科に受診、という説明がなされていれば
それはそれで問題ないかと思います。
そして結構治る症例が多いのも事実です。

実は外来で診療する皮膚科疾患のおそらく8割はステロイドで治癒してしまうものなので、
そういった意味ではまあ、下手に強いのを出されるより副作用という観点で無難だし、
中等度の症例なら略治させることが出来るため診断できなくたって無難だってことですね。

 

・・・・と、まあ。

なんか他科の先生からのすっごい白い目と
教授からの「こんなことを書かせるために修行させたのではない!」
という声が聞こえできそうですが。。。


いやいや、決して他科の先生を貶しているわけではないですよ。
私も他科の薬剤なんて、めっちゃ基本的なものしか扱うことが出来ないですし。

ただ、このようにRVG-Oはすっごく無難なのですが、
「なぜ無難か」という事を知っておくことも大事なことです。

大都会でしたら皮膚科専門医なんてあちこちゴロゴロいますが、
少し地方に行くと、医師の偏在は皮膚科においても例外ではありません。

セルフメデュケーション」が叫ばれる中、こういった無難な薬剤は貴重で
手元にあるだけでちょっと安心ですよね。

虫刺されなどでもらったけど一本とか使わないし、余ったけどどうしよう・・・
なんて思っている貴方。
とりあえず無難な薬剤です。
どうしてもすぐ受診できないけど、かゆくて我慢できない!
なんて時は、数日くらいは使ってもいい・・・かも・・・・です。
(診てもいないので責任は全くとらないですけど(‘ω’)w)

ま、皮膚疾患で悩んだら、仕事だろうがデートだろうがイベントだろうが
「皮膚科専門医」の皮膚科に受診しましょーね( ゚Д゚)
それこそが無難な答えです。

 

 

この記事の担当者

横山 侑祐
あいち栄クリニック 院長 横山 侑祐
「美容医療ってこんなにわかりやすく、こんなに楽しく受けれるものなんだ!」という声をいただくことを目標に診療しております。診療だけでなくSNSやコラムも積極的に更新しておりますので、是非一度ご覧ください。
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