https://news.yahoo.co.jp/articles/a2ccf9151bcbadb77a3af1ac9b8101b645c66e08
さて、今世間様を騒がせているニュースから。
先日とあるテレビで「脱ステロイド」を推奨するかのような内容があった。
我々皮膚科医が長年かけて見当違いのステロイドバッシングを
本当に身も心も削られる思いで少しずつ少しずつ改善してきたのに・・・だ。
皮膚科医としての意見は近畿大学医学部皮膚科学教室 大塚教授もおっしゃるように
1. 「脱ステロイド」は民間療法であり、治療ではなく放置。ステロイドは歴史がある良い薬
2. 顔に塗ることだけで体内のステロイドが作られなくなることはない
3. 脱ステロイドの激しい炎症でこすったり叩いたりすることで起こる白内障、網膜剥離のリスクに触れていない
である。
それは現時点での日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の総意であるだろう。
さてなぜここまでステロイドバッシングが起こるかというと
アトピーは母数が多く、難治で、見た目にわかる病気だからだ。
もっと強い表現で言えば、「アトピーは金になる」からだ。
アトピーの方たちは長年悩まれて、色々なものにすがろうとする。
人間だもの、心が弱くなることだってある。そんなの我々皮膚科医だってわかっている。
でもそんな心の隙間を、悪い奴らは見逃さない。
やれクリームだ、から始まり、水を変えろ、壺を飾れ、お札を買え・・・・
びっくりするような話だが、このインターネットが普及した現代においても
現実にまだ続けられている商売だ。
(もちろん中には効果的な治療もある・・・・かもしれない。でもそんなすごい治療なら皮膚科医がそもそも導入しているよね。)
そしてさらにびっくりすることに未だにその商売にはまってしまう人達がいる。
もっとタチが悪いことに、ほとんどの人がその商売を良いものとして信じて疑わず、他人にも勧める。
まるでネズミ講のように。
ではステロイドバッシングはなぜ起きたか。
その答えは簡単で、上記の商売の敵でしかないからだ。
ステロイドは本当に良くできた薬剤で、多くの症例に関し劇的に改善を図れる。
劇的な改善を図れると、上記の商売はなりたたなくなるため
アトピーをビジネスにする輩にとってはステロイドは邪魔な存在となる。
なのでどうにかステロイドの足を引っ張る口実を探したわけだ。
結果、副作用のない薬剤なんてないのに、バッシングをするために副作用をクローズアップさせた。
いや、クローズアップすらもしていない。
「なんとなく怖い薬」とすることのみで人の心を動かすには十分だった。
ほとんどの人たちは詳しい内容を精査することなく、ニュースや知り合いのいった
「なんとなく怖い」という表現を鵜呑みにし、拒否反応をしめすようになる。
人間の心理ってそんなものだ。
(かくいう私だって、ニュースに流されるときもある。)
現に私の外来でも口頭一番
「ステロイド拒否なんで!」とおっしゃる方がいるが、なぜ嫌なのか聞いても9割方は
「なんとなく怖い」もしくは間違った副作用を回答する。
残念な事に人間は一度信じてしまった説を容易に変えようとはしない。
目の前にいる長年アトピー診療に従事してきた医師よりも、
ニュースや周囲の人間の「なんとなく怖い」を信じてしまう。
説き伏せればいいじゃないか、と思われる方もいるかもしれない。
思考を変えれないのは医師のスキルの問題だ、という方もいるかもしれない。
実際にその場に立ってもらえばわかる、本当に・・・本当に困難なのだ。
仮にも相手を否定することになるから。
意見を否定されると、へそを曲げてしまう方は一定数いるから。
我々皮膚科医も商売だ。
私のように心の強い人間ばかりでなく、多くの開業皮膚科医が評判を気にしてしまう。
ステロイド拒否患者も「お客様」として丁重に扱わなければ、
良くない噂や書込み、コメントをつけられ、とたんに商売あがったりになる。
まっとうな医療、アトピー患者の為を思った意見を突き通しても商売にならなくなってしまうのだ。
だから我々皮膚科医は長年かけて、本当に少しずつ
氷河の氷を解かす思いでステロイドバッシングの氷を溶かしてきた。
なのに・・・それなのにテレビでこのような内容を報じれば、
また詳細を検討しない一定数の方は「なんとなく怖い」という思いに駆られてしまう。
テレビも商売なので、おそらく人目を引く「健康」関連は一つのパワーコンテンツだろう。
でもね、アトピーとか繊細な問題は本当に内容を精査した上で丁寧に扱って欲しい。
納豆が健康にいい、レベルとは大違いの大きな問題を抱えた一種の闇なのだ。
さて長くなってしまったが、何を言いたいかというと・・・
出所の良くわからない情報より
目の前の貴方を治そうとしている皮膚科医の情熱を信じて欲しい
本当にそれだけ。
水や壺と違い、皮膚科医が貴方を診療して手にする金額は1000円程度だ。
アトピーと向き合うために大学6年、研修医2年、専門医専攻5年の計13年を費やして得た
専門的知識に加え、日々の新しい医学情報を手にした上でのサービスが1000円だ。
もう、巷のアトピービジネスが信じれるか、皮膚科医が信じれるかなんて一目瞭然だよね。
皮膚科医はステロイドを売りつけたってすごい金になるわけじゃない。
とにもかくにも目の前の貴方を治したいんだ。
かゆくて夜も眠れない、ごわごわガサガサになった、ところどころ浸出液をだす
貴方の皮膚をほっとけないんだ。
皮膚科医は貴方の味方でしかない。
だから、もう一度まっさらな気持ちでアトピーに向き合って
目の前の皮膚科医を信じて欲しい。
ちなみに「脱ステロイド」の本当の意味は
「ステロイドもしくはそれ以外の薬剤も含め上手に使用し、皮膚の状態をなるべく良い状態に保つことで、保湿剤さえ塗っていればほぼほぼ生活するうえで健常人と変わらない皮膚状態にすること」
である。
もちろん我々皮膚科医もその意味で「脱ステロイド」を目指している。
この記事の担当者
- あいち栄クリニック 院長 横山 侑祐
- 「美容医療ってこんなにわかりやすく、こんなに楽しく受けれるものなんだ!」という声をいただくことを目標に診療しております。診療だけでなくSNSやコラムも積極的に更新しておりますので、是非一度ご覧ください。
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