いやあ、また変な人に遭遇してしまいました。。。

ちょっと何かを齧った人って、自分の知識を発信したくなる
そんな気持ちもわかりますがね。

今回はどちらかの薬剤師さん(匿名だからホントかはしらんけど)が

ヤケドに抗生物質ぬっとけ!

とおっしゃっていたのが発端です。

・・・まあね、なんだろ。
悪くない。悪くないけどよくもないんですよね。

結論から言えば、
軽傷ならぶっちゃけワセリンで必要十分、大丈夫。

って話なんですけどね。

いや、だってそもそもワセリンのが安いしね。

こちとら皮膚のプロなわけです。
いやあ、プロのアドバイス、素直に受け入れようぜ(;^ω^)
って思うわけですよ。
(すっげー突っかかられてマジデメンドクサカッタ・・・)

・・・というわけで今日は何故やけどにはワセリン>抗生物質外用薬か
というお話でも。

①ヤケドに必要なのは湿潤環境
 この意味ではどちらでも問題ないです。 
 基本抗生物質外用薬って「抗生物質」を「ワセリン」に溶かした製剤(ものによるけど)ですから
 濡れてる環境を造ろうとした場合ぶっちゃけどっちでもいいわけです。
 ・・・で、どうせならたっぷり使えて安い方がいいじゃないですか。
 抗生物質外用薬買ったことあります?ちょっとしか入ってなくて高いですから。
 ワセリンなんて「樽」にはいってますから。
 もうね、保湿するためにガッツリ濡れちゃうんです。

 だからワセリンに軍配が上がるんですよね。

 

②安全性の問題
 起こるかもしれない、起こらないかもしれない。
 でも起こっちゃえば生涯付き合わなきゃいけないのが薬剤アレルギーです。
 ・・・え、薬剤アレルギーになったとしてその薬を使わなきゃいいじゃない!
 そう思うかもですね。
 残念なことに抗生物質の中には構造が似通っており「交差反応」といって
 別の薬剤に対してもアレルギーを起こしてしまうことが知られています。

 ここで言う「アレルギー」は多くの場合4型、つまり接触皮膚炎(かぶれ)を指すわけですが、
 外用薬の中にも1型、つまり蕁麻疹型、アナフィラキシーを起こすものがある事が知られてます
 (これ、皮膚科医でも知らん人います。)

 ああ、なんでそんな事に詳しいかって??
 ワシ・・・学会発表してますねん。

 『ドルマイコーチ軟膏による即時型アレルギーの1例 /第246回日本皮膚科学会東海地方会

 この時鬼のように散々過去の論文引っ張り出してるので、この領域には結構詳しいです。はい。

 

③感染してないのに抗生物質が必要か
 もうね、ホントこれにつきます。
 日本の医者(海外知らんけど)、何でもかんでも抗生物質出しすぎです。
 相手がウイルスだろうが、耐性菌だろうが構わず出しまくってます。
 
 それはさておき外用抗生剤の感染予防効果に関してはかなり懐疑的で、
 かの有名な「ゲンタマイシン」にいたっては、主なターゲットとするブドウ球菌は
 8割以上が耐性をもっているといわれています。

 皮膚科領域における感染症の基本は

 ・膿があれば膿をだす
 ・異物があれば異物を取り除く
 ・密閉空間であれば開放する
 ・壊死組織があれば取り除く
 ・血流がないところには抗生剤は乗らない
 ・ターゲットの菌に対し有効な抗生剤を用いる

 です。

 いやね、一般の方が多く勘違いしているのは
 「抗生物質は万能」という迷信です。
 あくまで抗生物質はターゲットに対しての相性が良くないと効果がない(薄い)です。
 それを理解しないまま「とりあえず」使うから
 なかなか治らなかったり、ひいては耐性菌の出現のお手伝いをしているわけです。

 必要な時、ここぞという場面で使う

 これが薬剤の正しい使い方です。

 ・・・それでは「予防」にはどうしたらいいか・・・という話ですね。

 基本的に水道水による洗浄で全く問題ありません。
 逆に抗生物質を使っていることに安心して、洗浄が疎かになる
 懸念すらあります。

 

④診断の妨げになる場合もある
 皮膚科医は皮膚を診て診断していきます。
 受診前に色々な治療(特に民間療法とかね)がやられており、
 その影響から状態がイレギュラーになってしまうことがあるため
 なるべく「早い段階で、下手に触る前に」視診したい、というのが皮膚科医のホンネでしょう。
 いわゆる「湿疹」は疾患や原因に限らず似た形態をしめすため、
 過去の経過などによっても我々の診断って変動しうるものです。

 ヤケド、はもちろん間違えようがない・・・のかもしれませんが、
 他の疾患にも言える事なので書いておきます。

 

⑤いや、ワセリン、バリ安いから。
 もうね、①でもいいましたがこれです。
 不要なコストを費やす必要なんてないわけです。
 ちょっとでも早く治るなら、もしかしたらコストをかける意味があるかもしれないです。
 でもね、抗生物質が入ってたらって、早く治るわけでもなんでもないですから。
 それなら少しでもリーズナブルな方が嬉しくないですか?

 

 

さて、つらつらと軽傷の火傷にはワセリンで十分だと伝わりましたでしょうか?

じゃあ、中等度以上ならどうか?というと、やっぱり抗生物質外用とか
マジで使いません笑

・・・ああ、たまに感染した時だけピンポイントで使ったり
薬剤が溶けている溶媒(基剤ともいいます)を使いたいがために
しかたなく使うことはありますけどね。

そんなこんなで私的にはワセリンで十分だし、
もし使うなら血流よくしたりする薬剤をつかったりします。

 

まあね、これがもうすぐ歴が20年のプロの意見です。

我々が診ているのは添付文書でも教科書でもなく
生身の人間です。

デスクワークも大事ですが、そのリアルな声に耳を傾けるのは
もっと大事でしょ・・・って思います。

ちゃんと人の意見に耳を傾けれる人間でありたいものです。

 

 

じゃあまあ今日の格言

かの有名な松下幸之助さんの一節を。

 

直な心とは

直な心とは
正直にして寛容な心
我執も偏見も妬みも憎しみもない心
ひろく人の教えを受ける心
分を楽しむ心であります
かつ静にして動
動にして静の働きある心
真理に通ずる心であります
素直な心が成長すれば
心の働きが高まりものの道理が明らかになって
実相がよくつかめます
またそのなすところ融通無碍
ついには円満具足の人格を大成して
悟りの境地にも達するようになります

 

PEACE!