さて、今日はこの場を借りて緊急の話題を。

つい先ほどとある美容外科医が「シャドードクター」と「手抜きオペ」の存在を
本人が在籍しているクリニックだけでなく、業界で蔓延していると
ツイート(もはや内部告発)していたのが話題になりました。
(いや、普通に蔓延してないからね(;’∀’))

さて、ここで耳慣れない言葉、

シャドードクター

というのが問題となっています。

定義は明確ではないですが
本人の了解を得ないまま、本人の認知なく契約した執刀医とは別の医師が執刀すること
の事を指すのではないかと思います。

もっとわかりやすい例えで言うと

A医師に執刀を依頼した。
静脈麻酔で寝ている間Aに変わりB医師が手術を遂行したが

お客様は寝ているため気づかなかった

そのB医師の事を
シャドードクター(影の医者)という

といったところでしょうか。

何故こんな悲劇が起きてしまうのか・・・
私も業界の端くれにはいますので、少しその原因と対策を考察してみました。

①忙しすぎる外来
そう、あまりに忙しく、予約を詰め込みすぎてオペがまわっていない
それが一つ目の要因だと思われます。
下手すると2列3列のオペを同時進行する可能性もあり、重要どころだけスタードクターが、
その他のパートを助手が行う・・・そういう事をしないととてもじゃないが回らない現実があるのかも。と考えました。
人気がある・・・といえば聞こえはいいですが、やはり無理な入れ方は褒められたものではないです。

なお当院は部屋数や予約調整でそういったことが起きない環境になってはいます。

 

②雇われドクターはインセンティブ
では①が起きないように予約を詰め込まなければよいじゃないか!
というのが一つの解決策です。

残念ながら、その策は難しいでしょう。
なぜなら多くの場合雇われたドクターは固定給に加え、「どれだけ仕事をしたか」
というのが評価歩合として給料に加わるのが業界の風習だからです。

この「どれだけ仕事をしたか」というのが、仕事内容という曖昧なものだと評価しにくいため
売上」という安直な金額というバラメーターが大事になってきます。
また、業績は業績を呼ぶといわれるため「いかに多くのオペを回すか」が業績の礎になってしまう可能性があります。
そんな環境下にあのが一因となっているのかもしれません。

 

③助手とするかシャドウとするか
例えば保険診療のオペでも執刀医の他に助手が何人か入る事があります。
コウビキといって手術野を広く保つための器具をもって症例に触ることもあります。
場合によってはその他の臓器をもったり、縫合したり・・・なんてこともします。

もしかしたら一般の方からした「オペってその先生”だけが”担当するんでしょ」は
本当にその先生「だけ」を指し、
我々医療者側からすると看護師さんがいて、事務さんがいて、その中に部下のドクターもいて。
自分の2本の手でたりなければあたりまえに誰かの手を使う、というのが習慣化されているのもしれません。

これは術前にどういう契約で臨んでいるかによりますが、
「チームで治療にあたる」という説明であれば、概ね問題ないような気もします。

執刀医以外が触れるパートがどれだけ結果に結びついてしまうか・・・それにより
シャドウかそうでないかが決まるのかもしれません。

当院では「最初から最後まで担当医がやる」と宣言していますけどね。

 

④若手や明らかに経験不足の医師の独立
最近の業界の問題の一つがこれですね。
割りと気軽?に開業できるのが美容外科・皮膚科のいいところ。
でも最近はあまりにも経験不足な事例がありますが、そういったクリニックでも
明らかに難易度が高いオペ(いや、君、それ出来ないでしょ)がメニューとして載っています。

難易度が高いものがあったほうが、なんだかスキルありそうに見えちゃうしね。

ではそのスキルがないのにメニュー(おそらく高単価)に出して、施術を申し込まれたらどうするか・・・
さあ、もうおわかりですよね。

 

⑤若手を育てる情熱
通常まだオペに不慣れなドクターはどのようにオペを習得していくかというと
爆安教育モニター、という「あからさまに教育しながらやるオペ」を用いることがほとんどです。
しかしお客様も「ただ安いだけ」でくる時代でもないです。
やはり症例が集まりにくい・・・という問題はあるでしょう。
そんな中で「ちょっとでも経験を積まそう」と思ってしまうのは
私も部下を育てる身としてわかるところでもあります。

 

⑥問題児やバイト医の存在
まだまだグレー・・・とはいいませんがオフホワイトな業界。
中には過去の諸事情だったり、現在の主たる勤務先の影響で
顔出しが出来ない、けど凄腕の先生というのは紛れ込んでいる可能性があります。

もしかしたらカウンセリング担当の先生とオペ担当の先生にわかれているかも。

丁度車屋さんでいう「営業」と「修理担当者」みたいなもんですかね。
お客さんは営業としか合わないですし、だれに修理されたかなんて知るよしもありません。

 

⑥静脈麻酔したらもうわけわかんない
手術、という特別な事を生業としています。
そしてその特徴として「麻酔」というものを上げられるでしょう。

もうね、寝ちゃえば何がなんだかわかんないです。
そして現状一番よくつかわれている薬剤には健忘作用があり
その点で「だれがやってもわからない環境」というのが安易につくれてしまうのです。

そしてそれは「手術室」という「密室」で行われている。。。。

 

 

さて、そんな感じでしょうか。

また何か思いついたら書きますが・・・

大事なのは対策!

 

・ドクターの評価を売り上げの数字ではない基準を作成する
・ドクターの勤務人数により、作成できるOPE室数を制限する
・契約時、オペ室に出入りしうる人の職種と人数を明記する
・なるべくキャリアの短い開業医で、高難易度のオペは申し込まない
・静脈麻酔、ここぞというときにしか頼まない
・ちゃんと顔出ししているドクターに任せる。

などでしょうか。

正直ね、この辺りはお客様とクリニック・ドクターの信頼関係なんで
ぶっちゃけこんな対策なんていらないと思っているわけですよ。
ちゃんと誠実に診療してさえいれば。

ただ・・・なんというか。

考察してみてなんですが、美容外科独特の構造が
シャドードクターが生まれやすい環境を作り出していることは
否めないな・・・とも思いました。

 

少なくとも医療法人愛栄会はオフホワイトの業界にあっても
より安心でより信頼できるクリニック作りを
これからも邁進していきたいな、と思います。

がんばります(‘ω’)